イレカワリ~番外編~
☆☆☆

家へ帰る道のりは警戒だった。


丘の上からブレーキも掛けずに自転車で下って行く。


5階の休憩室には大きなソファが4つ。


長いテーブルが2つ。


テーブルを中央に移動して2つ隣り合わせに並べて、それを囲むようにソファを置けばいい。


飾り付けは、ド派手なやつを作ろう。


場所が病院だってことを忘れるくらいきらびやかで、可愛いのがいいな。


あれもこれも考えている間に家が見えてきて、玄関先に歩の姿を見つけた。


私服姿がボーっと突っ立っている。


俺は自転車を置くと玄関へと向かった。


正直、今はあまり会話をしたくなかったけれど、玄関先にいられたら嫌でも顔を突き合わせて会話することになる。


「こんな所でなにしてんだよ」


そう声をかけると、歩がこちらを振り向いた。


「あぁ……。今朝のこと、謝ろうと思って」


ぶっきら棒な口調でそう言う歩。


「沙耶の誕生日を忘れてて、悪かったよ」


ムスッとしたままでそう言う歩に、思わず笑い出してしまいそうになった。


俺も歩も、本当に素直じゃないなと感じる。


俺は歩の頭をクシャクシャッと撫でた。


「いいよ。俺も、ちょっと言い過ぎた。ごめん」


そう言うと、歩は笑顔になった。


俺もつられて笑顔になる。
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