イレカワリ~番外編~
そんなある日の事だった。


「歩、ちょっといいかな?」


昼休み中にここねに声をかけられて俺はスマホゲームから視線を上げた。


なんだか真剣な表情を浮かべているここねに、俺は首を傾げる。


「俺はいいよ」


一緒にゲームをしていた純が顔も上げずにそう言った。


「あぁ。じゃぁ、ちょっと行ってくる」


俺は純にそう声をかけてここねと2人で教室を出た。


一緒に登校したあの日から、クラス内ではなにかと噂になっている俺とここね。


そんな時に2人きりになってしまうとまた何か言われると思うけれど、ここねはそういう事をあまり気にしない性格なのかもしれない。


ここねに連れてこられたのは屋上だった。


普段は鍵が閉められているのだけれど、今日は3年生が卒業アルバムの集合写真を撮ると言う事で、特別に解放されていた。


「気持ちがいいな」


屋上に出ると心地よい風が吹いていて、大きく伸びをした。


凝り固まっていた体が柔らかくなっていくようだ。


「歩ってさ……」


ここねがそう言い、俺は「なに?」と聞く。


「最近声をかけてくれないね」


俺に背中を向けてフェンスに手をかけたここねがそう言う。
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