イレカワリ~番外編~
「もし嫌だったらって――」


「嫌なんかじゃない!」


俺が言い終わるより先に、ここねは力一杯そう言っていた。


顔はさっきよりも真っ赤になり少しだけ涙目になっている。


「嫌じゃないから……だから……」


しどろもどろになってうつむくここね。


その体を抱きしめたい衝動に駆られる。


どうしてこんなに可愛いんだろう。


沙耶とは違う。


ちゃんとここねを好きになれそうな気がする。


「最近、少し忙しいんだ」


俺はここねの頭を撫でてそう言った。


柔らかな髪の毛が指先に絡み付く。


このまま引き寄せることができれば、どれだけ幸せだろうか。


「うん。知ってる」


ここねは頷いた。


最近では学校にも折り紙を持ちこんで飾り付けの準備をしている。


ここねはそれをちゃんと見ていたようだ。


「友達の誕生日パーティーの準備なんだ」


「歩の友達の?」


「あぁ」


「それって、あたしも出ちゃダメ?」


そう言われて俺は返事に困ってしまった。
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