イレカワリ~番外編~
「沙耶、大丈夫か?」


横に座って声をかけると、沙耶が微かに目を開いた。


その目は熱で潤んでいる。


「海……来てくれたんだ」


そう言う声もとても苦しげて、見ているだけで泣きたくなった。


好きな人が目の前で苦しんでいるのに助ける事ができない。


それは体を縛り付けられているような感覚に近かった。


「あぁ。今日はお見舞いの品がなにもないけど」


そう言うと、沙耶は微かに笑った。


「いつもいいって……言ってるのに」


洗い呼吸を繰り返しながらも、いつのものようにそう言う沙耶。


その時だった、


沙耶が激しくせき込み始めたのだ。


「沙耶!?」


俺は慌てて沙耶の背中をさする。


「海君、今日はもう帰った方がいいかもしれないわ」


看護師がそう言う。


「でも……っ」


「沙耶ちゃんの事はあたしたちに任せて。海君は、まだやることが残ってるでしょう?」


パーティーの事を言ってくれているのだと、すぐに分かった。


今はそんな事はどうでもいい。


そう思ったけれど、反論せずに俺はそっと沙耶から身を離した。
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