イレカワリ~番外編~
☆☆☆

病院に到着すると、談話室はいつもと姿を変えていた。


俺が家で書いた、誕生日おめでとう沙耶!の文字が、窓際の天井からアーチ状に吊り下げられている。


テーブルは並んで置かれ、その周囲を囲むようにソファが移動されていて、壁には折り紙で作った飾りがふんだんに飾られている。


「すっげぇな」


その様子を見て思わずそう言っていた。


「歩!」


談話室の中で準備を進めていた海が俺に気が付いて手をあげた。


「海、お前すげぇな」


病院の壁には海のポスターが張られてその上から飾り付けがされているため、この空間だけ別世界のように見える。


まるで海岸にいるようだ。


「だろ? 沙耶と約束したんだ。来年3人でまた海に行こうって」


そう言ったとき、海が俺の後ろに立っているここねに気が付いた。


そして目を見開く。


「クラスメートの小田ここね」


「はじめまして。海君だよね? 歩から双子の兄弟がいるって聞いてるよ」


ここねはそう言い、海へ向けて軽く会釈をした。


「あ、あぁ……」


海は何度か瞬きを繰り返し、そしてよやく笑顔になった。


その様子を見て一抹の不安が過る。


やっぱり、海から見てもここねは沙耶に似ているのかもしれない。
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