イレカワリ~番外編~
内緒の2人
この日も、俺は学校が終わってから病院へと向かっていた。


昨日の歩との会話を思い出す。


『沙耶はもう……』


沙耶はもう、長くはない。


それがずっと頭の中にあった。


少し無理してでも毎日沙耶に会いたい気持ちが膨らんでいた。


自転車をこぎ、途中でコンビニに寄ってちょっとしたお菓子を買い、病院へと向かう。


沙耶が少しでも笑顔になるように、できればずっとそばにいてあげたかった。


だけどそれは無理だから、一分でも一秒でも早くつけと自転車をこぐ。


病院についたころには頬に汗が流れていた。


俺は自転車を止めて制服の袖口で汗をぬぐった。


その場で乱れた呼吸を整えるため、大きく深呼吸を繰り返す。


いつものように受付に挨拶をして、エスカレーターに乗り込んだ。


右手にはコンビニの袋。


その中には沙耶の好きなイチゴのチョコレートが2つ入っている。


今日はどんな話をしようか。


昨日見たお笑い番組の話がいいかな。


沙耶は最近のお笑い芸人が好きだから、きっと笑ってくれるだろう。
< 76 / 117 >

この作品をシェア

pagetop