イレカワリ~番外編~
☆☆☆

夕方になって家に帰ると、すでに夕飯の準備が終わっていた。


「ただいま」


「おかえり海」


食器棚から箸を取り出していた歩が振り向いてそう言った。


テーブルの上にはハンバーグとスープ。


両親はまだ家に戻ってきていないのに、ちゃんと4人分が用意されている。


「うまそうだな」


「お前が作るよりはうまいと思う」


歩はそう言い、笑った。


歩は本当に料理上手だ。


将来そういう仕事につきたいと言っていたから、家で料理をすることも苦ではないようだ。


俺は沙耶のお見舞いを買うために自分の昼ご飯をぬいたから、お腹はぺこぺこだった。


ハンバーグの匂いは食欲を刺激している。


「沙耶はどうだった?」


「元気そうだったよ。来年海に行く約束をしてきた」


そう返事をして椅子に座った。


「海?」


「あぁ。あとキャンプと釣りとプールと花火と、あとは……なんだったかな? 忘れた」


そう言うと、歩がプッとふきだした。


「約束しすぎだろ」


「今年はどこにも行けなかったからな。来年はその分遊ばないと」


そう言い、歩の作ったハンバーグを大口で口に運んだ。


肉汁がジュワッと口の中に広がり、思わず笑顔になれえるような味がした。


「どう?」


歩は箸を持ったまま動きを止めてそう聞いて来た。


俺は口の中がパンパンで返事ができないため、代わりに左手の親指を立てて見せたのだった。
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