イレカワリ~番外編~
途端に胃の中のものがせりあがってきて、俺は靴を履きかえる暇もなく近くのトイレに駆け込んだ。


便器に顔を突っ込み、思いっきり吐き出す。


胃に残っていた昨日の晩ご飯が少しだけ出た。


荒く呼吸を繰り返すが、落ち着く事なんてできなかった。


あんな写真を撮らせたあげく、下駄箱に貼らせるなんてどうかしている。


頭がおかしいとしか考えられなかった。


ここねはあんな子だったのか?


沙耶に似ているということで俺が勝手に美化しすぎていたのかもしれない。


もう、いい。


ここねへの愛情はとっくに嫌悪に変わっていた。


それなら、あとは海と仲直りをすることだけを考えればいいんだ。


そう思い直し、口をゆすぐ。


ついでに冷たい水で顔も洗った。


トイレから出た瞬間、下駄箱の方で女子生徒の悲鳴に近い声が聞こえてきて、俺はそちらへ顔を向けた。


ここからじゃあまりよく見えないけれど、ここねが登校してきたのだということはわかった。


俺は自分の足元を見た。


まだ運動靴のままだ。


履き替えなきゃいけない。


だけど下駄箱に行けばここねに会ってしまう。


躊躇していると今度は鳴き声が聞こえて来た。


それをきっかけに集まっていた生徒たちはバラバラと解散していくのが見えた。
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