ガスコンロで煙草に火をつけようとして、まつ毛を焦がした叔父と僕と、ごくまれにアイツ
ちなみに僕の家はIH
叔父が、食あたりで入院した。叔父は、一人暮らしで何か消費期限の切れたものを食べたらしい。
まつ毛の先が少し白い叔父が、お見舞いにやってきた僕に、言う。
「お前も、気をつけろ」
僕は、頷き、病室を出ようとした。その時、手に包帯を巻いた男が入ってきた。そして、叔父の隣のベッドに座った。
無表情の男だった。
僕は、家に帰って、大好きなサイクルロードレースを録画したDVDを見た。そして寝た。
1ヶ月後ー。
僕は、叔父が退院するというので、お父さんと病院に向かった。車の中でお父さんが言う。
「お前の好きなライダー、ほら、アイツ、ソニックマンだっけ?落車してから、まだ復帰しないのか?」
「まだしてないよ。落車は、相当ひどかったけど、ソニックマンはヘルメットとサングラスが規定ギリギリの特注で頭部には外傷がなかったのが幸いだったよ。だから、顔も、普段よく見えなくて、アシストだから、まだ勝利者インタビューもされてないんだよね。さすがにインタビューでは、顔を出すと思うんだけど」
そんな会話をしていたら、病院に着いた。叔父が車に乗り込んできた。車が動き出す。
外を見たら、叔父と同室の男も退院したらしく、ロードレーサーで颯爽と走っていた。
フォームが、誰かと似ているなと思いながら、僕は彼を見ていると信号が赤になり、車は止まり、彼は行ってしまった。
叔父が僕に、言う。
「病室で、隣の男とサイクルロードレースで盛り上がってな。俺も好きなの、お前、知ってるだろ?好きなライダーも、お前と同じソニックマンだし。それを話したら、何か、あの男、ソニックマンの知り合いだって言い出してサインもらってきてくれたよ」
僕の前に色紙を出した。
ソニックマンは、誰かにサインとかするのかな?
と、僕は思いながらも、ずっと色紙を見ていた。
(おわり
)