エドガー

１日目

エドガーが目を覚ました時にはすでに6人の「兄弟」がいた。
白くて硬い寝台の上に横たわっていたエドガーに、彼らは次々と挨拶をし、彼がエドガーという名前なのだと教えてくれた。
彼らは大変雄弁で、たくさんの言葉をエドガーに投げかけたが、エドガーはそれを理解することが出来なかった。
「さぁ、仕事だ。」
ロクと名乗った子が言った。そうしてエドガーの手を引くと、部屋から連れていこうとする。
どこに行くのか、ぼんやりとした疑問が浮かんだが、それをエドガーが口にすることは無かった。
薄暗い闇を潜ってたどり着いたのはピカピカと光る何かが浮かんでいた。
真っ白のものや、汚れているものもある。
ロクはエドガーにバケツを渡した。ブリキでできたバケツには汚れた丸い何かがたくさん入っていた。
「きみの仕事はこれを磨くんだ。今は何も分からないかもしれないけど、それでいい。また明日教えてあげるからね。さぁ、仕事をしよう。」
ロクはエドガーよりもエドガーのことを知っているようだった。
薄い布切れを渡されて、エドガーは教えられた通りに丸いものを磨いた。
汚れているそれは磨くたびに綺麗になっていく。
何度も繰り返し、一個が綺麗になると次へ。
エドガーは何も分からないまま、作業を続けた。
薄闇が明るくなった頃、ロクは兄弟に声をかけた。
「仕事は終わりだ。さぁ、みんな戻ろう」
ロクの一言で、みんな片付けに入った。
そしてエドガーはまた手を引かれて元にいた部屋へとフワフワとした面持ちで帰っていった。
大きいアーチを描いた扉を潜ったそこは開けていて白い柱が何本も立っていた。
柱と柱の間にはハンモックが人数分かかっていて、兄弟たちはそれぞれハンモックに横になり寝るところだった。
エドガーはそれを見ながらぼんやりと立っていた。自分が何をしていいかわからなかったのだ。
ロクはそれを見てエドガーの分のハンモックを準備してくれた。
「きみの分だよ。さぁ、おやすみ。明日にはきみも全部分かるからね」
そう言ってロクは自分の寝床へと入っていった。
エドガーはしばらくぼんやりとしていたが、自分も用意されたハンモックへと寝転んだ。
見上げた天井は高く、薄闇が続いていた。
フワフワとした気持ちは続いたまま、エドガーはいつの間にか眠っていた。