君に、最後の長いためいきを
『ねえ』

『なんだよ』

『んー、なんでもない』


そんな短い会話が好きだった。


楽しげに輝く瞳が好きだった。


長い間、あいつに心の特別な部分をあけていた。


楽しかったものも、失敗して忘れてしまいたいくらいのものも、みんなみんな、思い出を一つ一つしまい込んで、鍵をかけて。


俺はそこだけ、あいつのために残しておいたのだ。


――今も、ずっと。


なあ。


なあ。


どうしたら、いいんだろうな。


お前が欠けてから、胸が苦しくて仕方ないんだ。




……おそらくこれは罰だ。


欠けてしまったら痛いくせに強がりを言った、罰なんだ。
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