君に、最後の長いためいきを
男女が二人でいることに対する考え方が変わっていく周りの視線に、感じるぎこちなさ。


気恥ずかしさ。

劣等感。

不安。


俺たちは微妙な年齢を通り抜けようとしている。その自覚はあった。


自分たちの世界がまるきり変わってしまったように感じられた。


ほとんど男女が混じっていたときとは異なって、あいつの友達は俺の友達、なんてことはなくなってしまった。


友達も違えば、いろんなものごとに対する感じ方も、身長も、声も、急激に変化しつつあったし、それに伴って俺たちの間にかつて確かにあった親密さも、だんだんとぎこちなくなっていくようだった。


なんとなく居心地の悪い気持ちにさせられた。


中学生の自意識はあまりに強く、何より、あまりに傷つくことを恐れていた。


『距離を置こう』


当時は、これが一番正しい対応だと思っていたのだ。


『何で?』

『何ででも』

『やだ』

『二人でいたら変なんだよ』

『やだ。なにも変なんかじゃないもん』

『変なんだよ、笑われてんだよ、分かれよ……!』


とにかく俺は距離を置く。


それだけ宣言して距離を空けた中学時代。


少しずつ関係を戻せた高校時代。


だけど、関係を戻せても、もう好きだなんて言える気がしなかった。


だって、そんなこと、言う資格がない。
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