黒桜 〜あたしと5人の黒狼〜
「…あぁ。……ナナキ!!」
バッとあたしの方を振り返る泰雅。
ちょっとビックリしたけど、泰雅の顔は、いつもの表情じゃなかった。
「…悪かったな」
どこか切なげな、優しい目。
今まで、こんな顔を向けられたことなんてないーーー。
謝られたことだって、一度も。
…あたしは、なんて言うべきなんだろう。
ただ、「いいよ」っていうのも、違う気がする
。
謝られたって、すぐに許せるほどの事じゃない。
だからーーーーーーー
「…許さない」
「……!!」
目を見開く泰雅。
だってそうでしょ?
あんなひどいことされて、許せるわけなんてないじゃん。
……前のあたしだったら。
「…次の彼女に、こんなことしたら、許さないからね」
だから、皮肉もちょっと込めて、笑顔で言った。
「……あぁ」
泰雅も、フッと笑った。
ねぇ、泰雅…?
あたしたち、初めて気持ちが通じあったんじゃないかな?