黒桜 〜あたしと5人の黒狼〜



「…あぁ。……ナナキ!!」



バッとあたしの方を振り返る泰雅。


ちょっとビックリしたけど、泰雅の顔は、いつもの表情じゃなかった。




「…悪かったな」




どこか切なげな、優しい目。


今まで、こんな顔を向けられたことなんてないーーー。


謝られたことだって、一度も。




…あたしは、なんて言うべきなんだろう。



ただ、「いいよ」っていうのも、違う気がする



謝られたって、すぐに許せるほどの事じゃない。



だからーーーーーーー





「…許さない」



「……!!」


目を見開く泰雅。



だってそうでしょ?


あんなひどいことされて、許せるわけなんてないじゃん。







……前のあたしだったら。




「…次の彼女に、こんなことしたら、許さないからね」



だから、皮肉もちょっと込めて、笑顔で言った。



「……あぁ」



泰雅も、フッと笑った。



ねぇ、泰雅…?


あたしたち、初めて気持ちが通じあったんじゃないかな?

< 102 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop