黒桜 〜あたしと5人の黒狼〜
昨日からずっと無視してたから、絶対に怒ってる。
…行かなきゃ。
「おい…どこ行くんだよ」
バーを出ようとしたあたしに、レイが言う。
低くて、少し大きくて、でも心配そうな声で。
「…別に。アンタには関係ないでしょ」
「……泰雅か。なんであんな奴のところへ戻る」
あたしだって…。
あたしだって戻りたいわけじゃない。
でも、この街にいる限り、あたしに自由はない。
「……生きるため」
レイに聞こえないような、小さな声で呟く。
そう。
生きるため。
ただそれだけ。
あたしは、走ってバーを出た。