黒桜 〜あたしと5人の黒狼〜
そんなある日。
「…てめぇが泰雅か」
一人で歩いているところを、隣りの地区の不良に絡まれた。
どうにも、俺たちの噂が奴らの耳に入り、気を悪くしたらしい。
「あぁ?だったらなんだよ」
「はっ、噂通りの野郎だな。目障りだ」
相手は10人程。
いくら、喧嘩が強いとはいえ、さすがに当時の俺にとって10人は、キツかった。
もちろん、圧倒的にボコボコにされた。
「……クソッ…」
夜の街の、路地裏。
口や額からは血が流れている。
立ち上がれず、壁に背を預けて空を見る。
喧嘩に負けた悔しさ…というのは無く、ただただ、むなしかった。
金はある。
力もある。
女もいる。
なのに、俺の心は、何かが足りなかった。