黒桜 〜あたしと5人の黒狼〜
「……クソッ…」
その時だった。
「あの…」
上から声が降ってきて、ゆっくり上を見上げると……
「これ…使ってください…」
ロングのサラサラの髪。
整った顔。
少し震えた、か細い声の女が、ハンカチを差し出していた。
薄い桜色の、綺麗なハンカチ。
差し出す真っ白な手も、わずかに震えている。
…怖がってんじゃねぇか、俺のこと。
「…いらねぇ」
「……っ!!」
目を見開いた女。
ほらな?
所詮、そんなもんだ。
怪我をしてかわいそうな人間を、同情して介抱する。
そんな当てつけな優しさはいらねぇ。