黒桜 〜あたしと5人の黒狼〜
その時、たしかに俺は、心の乾きがなくなっていた。
たった、数分。
だが、俺には十分だった。
「……ナナキ、か」
なにがなんでも、あの女を手に入れたい。
アイツといれば、俺の乾きはきっと無くなる。
あん時の俺は、そう信じていた。
「…何するんですか!!やめて!!」
すぐにフルネームを調べあげ、部下たちに連れてこさせた。
俺を見た時のあいつは、完全に怯えていた。
…俺のことは、覚えていなかった。
でも、それでもいい。
「おい…俺の女になれ」
俺は気づいていなかった。
ナナキの目には、あの時の光がなかったことに。