夜明けのエトセトラ
夜明けのエトセトラ
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 時刻は土曜になった午前3時25分。

 同じチームなのに、運よくプロジェクトから外れて逃げ出したのが2人。同じチームだから、運悪くプロジェクトマネージャーに捕まったのが2人。

 契約会社さんに提出するプログラムソフト。土壇場になって欠陥が見つかって、かなりの修正を余儀なくされ……。

 いつも付き合いのいい東雲くん。プロジェクトマネージャーの佐伯。そしてあたしが残った。

「柏木」

「あ……?」

 見ていた画面から顔を上げると、佐伯の渋い顔が見える。

「煙草吸ってんじゃねーよ」

「煙草吸いに席外していいの?」

「それは困る」

「禁煙なんてナンセンス」

 キーボードを打ちながら、持っていた携帯灰皿に煙草の灰を落とした。

 普段、部署内で煙草を吸うことは禁止されている。されているけれど、結構それは夕方近くになるとコッソリ破られる禁止事項。

 残業が多いメンバー内では、公然の秘密となる。

「煙草の臭い、ブースに篭るんだよ」

「換気すればいい」

「そういう問題じゃねぇ」

 普段は礼儀正しい佐伯も、徹夜になるとタガが外れる。

 睨み合いは続き……。

「ロスタイムになりますよ~?」

 東雲くんの、のほほんとした暢気な声に毒気が抜かれる。

「プログラミングした後で、最終チェックしたいんでしょう? なら、5時までがギリギリってところじゃないっすかぁ?」

「うるせー。ちゃんと手は動かしてらぁ」

 佐伯の言葉に、東雲くんは首を傾げて苦笑した。

「ミスしないで下さいよ~?」

「うるせー。嫁さん貰ったからって、余裕見せてんじゃねぇよ!」

「……ひがみか? 佐伯」

 思えば佐伯は31。片や東雲くんは26……か7。

「男としては雲泥の差だねぇ」

「お前も人の事言えんのかっ! 29で独身のくせに!」

「別に、いい人もいないからなぁ」

 ポツリと呟くと、東雲くんの動きが止まった。

「え。柏木さん…室長とのウワサはっ!?」


 それはどんなウワサだろうか? 室長クラスはみんな既婚者……。


「……あ」


 失敗した、と言う表情の東雲くんを眺めて目を細める。
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