夜明けのエトセトラ
夜明けのエトセトラ
*****
時刻は土曜になった午前3時25分。
同じチームなのに、運よくプロジェクトから外れて逃げ出したのが2人。同じチームだから、運悪くプロジェクトマネージャーに捕まったのが2人。
契約会社さんに提出するプログラムソフト。土壇場になって欠陥が見つかって、かなりの修正を余儀なくされ……。
いつも付き合いのいい東雲くん。プロジェクトマネージャーの佐伯。そしてあたしが残った。
「柏木」
「あ……?」
見ていた画面から顔を上げると、佐伯の渋い顔が見える。
「煙草吸ってんじゃねーよ」
「煙草吸いに席外していいの?」
「それは困る」
「禁煙なんてナンセンス」
キーボードを打ちながら、持っていた携帯灰皿に煙草の灰を落とした。
普段、部署内で煙草を吸うことは禁止されている。されているけれど、結構それは夕方近くになるとコッソリ破られる禁止事項。
残業が多いメンバー内では、公然の秘密となる。
「煙草の臭い、ブースに篭るんだよ」
「換気すればいい」
「そういう問題じゃねぇ」
普段は礼儀正しい佐伯も、徹夜になるとタガが外れる。
睨み合いは続き……。
「ロスタイムになりますよ~?」
東雲くんの、のほほんとした暢気な声に毒気が抜かれる。
「プログラミングした後で、最終チェックしたいんでしょう? なら、5時までがギリギリってところじゃないっすかぁ?」
「うるせー。ちゃんと手は動かしてらぁ」
佐伯の言葉に、東雲くんは首を傾げて苦笑した。
「ミスしないで下さいよ~?」
「うるせー。嫁さん貰ったからって、余裕見せてんじゃねぇよ!」
「……ひがみか? 佐伯」
思えば佐伯は31。片や東雲くんは26……か7。
「男としては雲泥の差だねぇ」
「お前も人の事言えんのかっ! 29で独身のくせに!」
「別に、いい人もいないからなぁ」
ポツリと呟くと、東雲くんの動きが止まった。
「え。柏木さん…室長とのウワサはっ!?」
それはどんなウワサだろうか? 室長クラスはみんな既婚者……。
「……あ」
失敗した、と言う表情の東雲くんを眺めて目を細める。
時刻は土曜になった午前3時25分。
同じチームなのに、運よくプロジェクトから外れて逃げ出したのが2人。同じチームだから、運悪くプロジェクトマネージャーに捕まったのが2人。
契約会社さんに提出するプログラムソフト。土壇場になって欠陥が見つかって、かなりの修正を余儀なくされ……。
いつも付き合いのいい東雲くん。プロジェクトマネージャーの佐伯。そしてあたしが残った。
「柏木」
「あ……?」
見ていた画面から顔を上げると、佐伯の渋い顔が見える。
「煙草吸ってんじゃねーよ」
「煙草吸いに席外していいの?」
「それは困る」
「禁煙なんてナンセンス」
キーボードを打ちながら、持っていた携帯灰皿に煙草の灰を落とした。
普段、部署内で煙草を吸うことは禁止されている。されているけれど、結構それは夕方近くになるとコッソリ破られる禁止事項。
残業が多いメンバー内では、公然の秘密となる。
「煙草の臭い、ブースに篭るんだよ」
「換気すればいい」
「そういう問題じゃねぇ」
普段は礼儀正しい佐伯も、徹夜になるとタガが外れる。
睨み合いは続き……。
「ロスタイムになりますよ~?」
東雲くんの、のほほんとした暢気な声に毒気が抜かれる。
「プログラミングした後で、最終チェックしたいんでしょう? なら、5時までがギリギリってところじゃないっすかぁ?」
「うるせー。ちゃんと手は動かしてらぁ」
佐伯の言葉に、東雲くんは首を傾げて苦笑した。
「ミスしないで下さいよ~?」
「うるせー。嫁さん貰ったからって、余裕見せてんじゃねぇよ!」
「……ひがみか? 佐伯」
思えば佐伯は31。片や東雲くんは26……か7。
「男としては雲泥の差だねぇ」
「お前も人の事言えんのかっ! 29で独身のくせに!」
「別に、いい人もいないからなぁ」
ポツリと呟くと、東雲くんの動きが止まった。
「え。柏木さん…室長とのウワサはっ!?」
それはどんなウワサだろうか? 室長クラスはみんな既婚者……。
「……あ」
失敗した、と言う表情の東雲くんを眺めて目を細める。
< 1 / 12 >