夜明けのエトセトラ
「……ん?」
今、あっさりと何を言ったかなぁ?
もしかして……。
「好きって言ったのか?」
「ああ」
涼しい顔で言ったらしい。
「あたし?」
「お前だな」
そうだろうね。それ以外、いないしね。
「それは……一般的に?」
佐伯は目を細めると、それはそれは深い溜め息をついた。
「お前さぁ」
「ん?」
「面倒なんだけど」
そう言って、背を向けるとスタスタと歩き始める。
「…………」
ちょっと待て。いくらなんでも待て。
それはないだろう? なさ過ぎるだろう?
「佐伯っ!! どっちなんだよ!」
叫ぶと、佐伯は足を止めて微かに振り返る。
「どっちがいい?」
ニヤリと微笑んで、また歩き出す。
「ちょ……っ!」
追い掛けて腕を掴むと、楽しげに見下ろす視線に瞬きをした。
「ちょっとは期待していいか?」
そんな事、解る訳がない。
「佐伯……」
「何だ?」
「あんたも相当、面倒臭い男だね」
「……ふぅん?」
そして……
佐伯はとっても爽やかな笑顔でこう答えた。
「……そりゃ良かった」
そう、一言。
fin.
2009.9/1 他サイトにて完結
2016.4/18 加筆修正にて完結。