夜明けのエトセトラ
 だから、真剣にコーヒーを淹れるのも、実は好きだったりする。

 粉を挽くときが1番好きなんだけど。まぁ、会社でコーヒー豆をゴリゴリ挽くって……さすがにそれは勇者だと思う。

 だから、会社ではうちで挽いてきた豆を使う。もちろん、酸化を防ぐために密封容器に入れてある。

 最低限、美味しく飲みたいからね!

 奥にある給湯室に入り、照明のスイッチを押すと、シンプルな白い壁の空間に瞬きをした。

 暗さに慣れた目に、この明るさは今更厳しい。

 それでも棚からヤカンを取り、お湯を沸かし始める。

 しかし……なんで、あたしが奴らのコーヒーを淹れなければならないんだ。

 ノコノコ淹れに来た、あたしにも問題はあるのか。 まぁ、深く考えても仕方がないな。

 確か、東雲くんは徹夜でも砂糖適量、ミルクも普通。佐伯は徹夜になると、砂糖は大量、ミルクなしになる。

 ……佐伯は将来血糖値があがるな。

「ってか、無意味だ。徹夜のコーヒーの好みを熟知するなんて」

「俺は楽でいいが」

「どぅわっ!!」

 イキナリ聞こえた背後からの声に、思わず直立。

 恐る恐る振り返ると、呆れた顔の佐伯がいた。

「……もっと女らしい悲鳴を上げれや」

「つーか、イキナリ後ろに立つなよ」

 咳払いをしたら、何故かニヤリと笑われる。

「単に、オヤジくさいだけだと思うんだがな」

「……はぁ?」

「お前、他部署の人間から、なんて呼ばれているか知ってるか?」

 そんなもん、知るわけないだろうさ。善くも悪くも、他部署に知り合いって少ないし。

 ただ……。

「クールビューティーだと」

 そう言って微笑む佐伯が、とても憎らしい顔をしてるのは何故だ。

 クールビューティー……クールでビューティーねぇ?

「佐伯。寒いけど?」

「そうだな」

「自分の言動には責任を持て」

「言ったの俺じゃないし?」

 肩を竦めながら、佐伯は腕を組んで給湯室のドアに背をもたれる。
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