本当の愛を教わる

地下鉄の入り口で、柘植が口を開いた。

「実はね~、話があるのは俺じゃないんだよね」

定期を鞄から取り出していた百合菜は、その言葉に驚き隣を見上げる。

「…意味が分かんない。柘植くんじゃなかったら、他の誰が私に話あるわけ?
知らない人の話聞く気はないよ?」

若干怒り混じりの声で問いただすと、隣の男はニコリと微笑んで答えた。

「俺の妹」



目の前の大人しそうな柘植の妹の話を聞き終えると、ため息が出た。

長くも無かった話の内容は、こうだった。

柘植の妹、楓には年上の彼氏がいる。この彼氏は社会人で、百合菜と柘植と同じ会社に勤めているらしい。

つい二週間ほど前のこと、居酒屋でバイトしている楓の友達が、その彼氏と百合菜がホテルに入って、一緒に出てくるのを目撃したと。

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