病弱少女の杞憂
体育の時間
体育でサッカーをしている生徒を照りつける真夏の太陽は、傍からみても彼らを熱くさせている原因だとわかる。


だけれど、その光はわたしに届いてはくれないらしい。


眩しいほどの笑顔で走り回る彼らを、羨ましく思う。


わたしは、幼い頃から走り回ることなどできなかったのだから。


「あれ、千歌?」


「橘くん…?」


「体操服忘れて見学になったー。」


「橘くんらしいね。」


「なんだよ、それー。」


甘利 千歌(あまり ちか)。


それが、わたしの名前。


そしてこの人は、橘 芙雪(たちばな ふゆき)。


中学校から今まで(高校一年生)一緒の同級生。


高校生になって、また同じクラスになった。


彼はルックスがよくて、頭もよくて、運動神経もいい。


それに、医者の息子らしくて医者になる努力をしているのだとか。


いつも明るくみんなを笑わせてくれる人気者…わたしとは正反対の人。


それでも、わたしは『あの時』から密かに彼のことが好きだった。


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