12月のアリス
両想い
あたしは急いで食パンを買って、彼の居る場所に走って行った。
「…」
扉の前に立って、心臓を落ち着かせた。
「…よしッ!」
コンコンと、彼の家の扉を叩く。
「さ、斉藤くん!真田です!」
彼の名前を呼んでみた。
暫くして、彼が扉を開けてくれた。
「白ちゃん」
あたしは彼の笑顔が大スキ。
ちゃんと言えば
彼の笑顔も引っ括めて
全部がスキ。大スキ。
斉藤 恵也
22歳。
画家をやってる、あたしの大スキな人。
食パンを買うのは、斉藤くんが絵で使うから。
ちゃんと食パンのお金は払ってくれてる。
別にいいのに。
「絵、完成した?口元汚れてるね」
「うん。ちょっと汗拭いたら手に付いた絵の具が付いちゃって」
「駄目だよ、タオルで拭かなきゃ」
「うん。ついね」
彼の笑顔は、ホントに大スキ。いつも見つめていたいくらい。
大スキ。