小悪魔な彼にこっそり狙われています
1.迎えた朝
職場の飲み会で浴びるほどお酒を飲み、泥酔した翌朝。
目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋で、恋人でもない男と裸でベッドに……なんてそんなベタなこと、起こるわけがない。
そう思っていた、はずなのに。
大きなダブルベッドの枕もとにあるデジタル時計が朝8時を指す、今現在。
私・井上澪は非常に困惑している。
ホテルと思わしき、見知らぬ部屋。
ベッドの周りに脱ぎ散らかした服。
起きた自分は、裸。
どう見てもその事件が、起きてしまっているのだから。
「な、なんで……」
なんで、どうして、なにがどうなってこうなった?
肩ほどまである黒い髪をぐしゃぐしゃとかきながら昨夜の記憶をたどるものの、なにひとつ思い出せない。
「……ん……」
すると、それまで隣で背中を向けて寝息を立てていた姿はもぞ、と動き、寝返りを打つように体の向きをこちらに変えた。
ほどよく筋肉がついた、色白の締まった体を惜しげもなく見せて、薄く目を開いた茶髪の彼。
見慣れたその顔に、自分の血の気がサーッと引く音が聞こえた。
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