小悪魔な彼にこっそり狙われています
いつも通りの、平日。火曜日の午後。
今日も人が行き交うオフィスで、私はひとりデスクでパソコンに向かい仕事をこなしていた。
いたっていつも通りの、変わらない光景。
……ひとりドキドキとしている、自分の心を除いては。
「井上さん、今日すごい集中力ですね。なにかあったんですかねぇ」
「なんか一心不乱にキーボード打ってるよな……」
落ち着かない心は、せわしない行動に表れてしまう。
昨日の集中力のなさから一転し、カタカタカタカタとひたすらキーボードを叩く私に、オフィス端からは部下たちの噂話が聞こえてくる。
別に、仕事に集中しているわけじゃない。
ただ心はドキドキとそわそわとしてしまい、それを落ち着けるためにとにかく手を動かしているだけだ。
……そりゃあ、心が落ち着かなくもなる。
思い出すのは、昨日のこと。来栖くんの家で過ごした時間のこと。
ま、まさか、来栖くんと寝てしまうなんて……!!
しかも素面で、自分の意思で、望んで……!
昨日はあのまま、来栖くんと……して、何度も何度も繰り返ししているうちに、気づけば夜はふけていった。