小悪魔な彼にこっそり狙われています



すると、突然ドアの方から聞こえた、コンコンというノックする音。

その音に顔を上げると、オフィスの入り口には半分ほど開けたドアの隙間から顔を覗かせる桐生社長の姿があった。



「井上ちゃん、おつかれ。ちょっといい?」

「はい?」



私を見つけ、ちょいちょいと小さく手招く社長に、不思議に思いながら仕事を中断させオフィスを出る。



桐生社長が私に用?って、なんだろう。

思い当たることも特になく彼の元へ向かうと、ひとけのない廊下に私と社長はふたりきりになった。



「どうかしましたか?」

「ちょっと聞きたいことがあってさ」



ストライプ柄の紺色のスーツに身を包んだ背の高い社長を見上げれば、その顔は今日も変わらずにこにことした笑みを浮かべている。



「井上ちゃんさ、来栖くんから話とかって聞いてたりしない?」

「話?って、なんのですか?」



首を傾げる私に、桐生社長は困ったように眉を下げると声をひそめる。


< 105 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop