小悪魔な彼にこっそり狙われています
「晶くんもコーヒー飲む?」
「えぇ。少し薄めで」
寝起きの少し掠れた声で答える俺に、「わかった」と頷きながらその手は目の前の棚から白いマグカップをふたつ取り出した。
彼女……澪さんと付き合って、2ヶ月。
暑い夏と長い残暑を終え、最近ようやく寒さを感じるようになってきた。
そんな日々を、俺たちはふたり、毎日寄り添い過ごしている。
あの『井上さんがほしい』宣言もあって、最初はかなり周りに冷やかされた……というか今も、冷やかされてばかりいる。
俺は先輩たちにあれこれからかわれることが多くて複雑だけれど、井上さんはあれ以来部下たちにからかわれ、怒ったり笑ったり、以前と比べて人間関係がよくなった気がするから、まぁよしとしよう。
会社ではそんな風に過ごし、仕事のあとはほとんどを俺の家で過ごし、泊まり、朝はふたりで会社へ向かう。半同棲のような形だ。