小悪魔な彼にこっそり狙われています



「だから順序とか関係なく、ここから攻めさせてもらいますから。覚悟しておいてください」



来栖くんはそう淡々と宣言すると、「あとこれ」とズボンのポケットから折りたたんだ一万円札を取り出し、私の手ににぎらせて会議室を出て行った。



それはきっと今朝私がホテルに置いて行ったお金で、『いらない』ということなのだろう。

いつもなら『いや、いいよ!』と彼に突き返すけれど、驚きと戸惑いで私は一万円札を握ったまま立ち尽くすしかできない。



ど、どういうこと?

来栖くんとの昨夜のことは事実で

だけど彼にとってはラッキーで

来栖くんは私のことが好きで

告白ついでにキスまでされて……



「……ゆ、夢?」



そう思い込むには、あまりにもしっかりとした感触に、ただただこれが現実なのだと思い知った。






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