小悪魔な彼にこっそり狙われています
「……く、来栖、くん……?」
「……はい、来栖晶です……」
まだ寝ぼけているのだろう。いつも以上にボーッとした顔で、朦朧とした声を出す。
「……あと5分、寝かせてください……」
かと思えば、彼は私が隣にいることになんの疑問を持つこともなく、シーツにくるまりまた眠ってしまった。
あ、朝弱い……って、そうじゃなくて!
なんで来栖くんがここに?
なんで私と来栖くんが?
なんでお互い裸で、なんでベッドに寝て、なんで……なんで……。
心の中で『なんで』を繰り返すものの、心の中では薄々気づいている。
酔った末の一晩の過ち。
その相手が、会社の後輩である彼だったということ。
「……とりあえず、逃げよう」
彼が二度寝をしてしまった今、とりあえず自分はどうするべきか考えると、私はすぐさまベッドから出て散らかった服を拾い集める。
そして服を着ると、化粧をし直すこともせず、とりあえず急ぎ足で部屋の出口へと向かう。
けれどふと思い出したようにもう一度部屋へ戻ると、テーブルの上に1万円を置き、今度こそ部屋を後にした。