小悪魔な彼にこっそり狙われています



全くって……また忘れてたの!?

本当にこの子は毎日毎日なにかしら忘れてるわミスするわ……しょうがない子だなぁ!!



「ちょっと、町田さん!?」

「はっ、はい!!」



先ほどまで心に言い聞かせていたことを一瞬で忘れ、ついまたきつく言ってしまいそうになる。

けれどその瞬間思い出すのは、昨日の来栖くんの言葉。



『けど俺は、周りに井上さんを誤解してほしくないと思ってます』



……そう、だ。

つい言葉が出てしまいそうな時は、ひと呼吸をおいて、彼の言葉を思い出す。

来栖くんが耳もとで囁いた、小さなひと言。



『笑ってるほうが、かわいいです』



そんな、顔に似合わないような素直な言葉を、真面目な顔でまっすぐに言うから。

思い出すと心がくすぐったくなって、怒る気持ちも吹っ飛んでしまう。



突然「ふっ」と笑みをこぼした私に、その場の全員がキョトンと目を丸くした。



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