小悪魔な彼にこっそり狙われています



「い……井上さん?どうしたんですか?」

「別に?ったく、仕方ない……皆で手分けして資料作るよ!手が空いてる人手伝って!」



いつものように怒るのではなく、前向きに指示をする私に、中でも一番驚きを隠せない様子の町田さんは、涙でぐしゃぐしゃになった顔で私を見る。



「井上課長……わたし、また大きなミスして……なのになんでっ……」



怒られることも、怒鳴られることも覚悟していたのだろう。その涙に、私はバッグからハンカチを取り出すと彼女に差し出す。



「今度から、任された仕事ややらなきゃいけないことは、ふせんにメモしてデスクやパソコンに貼っておくこと。わかった?」

「は、はい……」

「なら早く涙拭いて仕事にとりかかる!ほら!」



そしてそれを受け取った彼女の背中を叩くと、皆に仕事を割り振り、自分の仕事にもとりかかるべく一度オフィスを出た。



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