小悪魔な彼にこっそり狙われています



「……けどありがとう。あと、昨日はごめんなさい」



つぶやいた、『ありがとう』と『ごめんなさい』。

その言葉に、来栖くんは少し驚いて、ふっと笑って距離を詰める。

そしてひと気のない廊下の真ん中で、私の額に小さくキスをした。



「お礼とお詫びは、これで貰います」



突然のことに驚き固まるものの、額に触れた薄い感触からこみ上げる実感に、かああと顔が熱くなる。



「っ〜……こらー!!」



怒って声をあげた私に、彼は「お疲れ様です」と笑みを浮かべたままその場を歩き出した。




本当、よくわからない。読めない人。

だけど、この心を少しずつ変えてしまう彼に翻弄される自分が、嫌いじゃないかもしれない。

なんて、そう思えた。






< 41 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop