小悪魔な彼にこっそり狙われています
キッチンの冷えたフローリングの上で、ふたりしゃがみ込んだ形で交わすキス。
細めた視界では、来栖くんが、いつものだるそうな瞳の中に熱を持って私を見つめている。
その眼差しと、甘いキス。それらはどこか心地よく、脳の奥まで溶けてしまいそうだ。
とめどなく入り込んでくる彼の香りに、次第に足からは力が抜けてしまい、唇が離れると同時に私はその場にぺたんと座り込んでしまう。
「どうかしました?井上さん。……もしかして、力抜けるほど気持ちよかったですか」
気持ち、よかった。
そのセリフをふっと笑みを浮かべて言う彼に、心を見透かされた気がしてドキリとした。
けれどそれをごまかすように、来栖くんの左足を手でバシッと叩くと、容赦ないその行動に彼からは「いっ!!」と短い悲鳴が出た。
「っ〜……なに、するんですか……」
「手出ししたら左足踏み潰すって言ったでしょ!」
もう、人が本気で心配しているのに!隙をついてキスするなんて……最低!
そう「ふんっ」と鼻息荒く顔を背けると、立ち上がり、気を取り直し料理を再開させた。
そんな私に、来栖くんは私の背後のフローリングに座ったまま。