小悪魔な彼にこっそり狙われています



「で、デート?」

「はい。井上さんの1日、俺にください」



そんなキザなセリフを、いたって真面目な顔のまま言う。そんな彼に、悔しいけれどまた心臓がドキリと鳴った。



私の1日をなんて、またそんな言い方をしたりして。

だけど、こうも一心に求める彼の瞳が嬉しい。なんて思う自分がいる。



「……怪我、きちんと治ったらね」



『いいよ』でもなく『喜んで』でもない、かわいげのない言い方で答えた。

けれど、そんな私にも来栖くんは嬉しそうに、目を細めて微笑んだ。



その笑顔に、心をがしっと掴まれた気がして、なんだかまた悔しい。



あぁもう、調子が狂う。

彼のペースに乗せられっぱなしだ。



彼の言葉に、行動に、唇に

胸をドキドキと、させられている。








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