小悪魔な彼にこっそり狙われています
私はここ、東京・港区、品川駅から徒歩10分先の位置にオフィスを構える食品卸会社、『株式会社セントラル・フーズ』の総務課で課長として働いている。
元々気が弱い方ではなく、なにかとはっきり言ってしまうタイプ。
そんな私のどこがいいのか、前任者が退職した際に社長から『総務課長はキミに任せた!』と任せられて早2年ほどが経ってしまった。
うちの会社の総務課は、ほぼ『なんでも屋』に近い。
事務仕事から社員管理関係、社内設備の管理……常にあれこれと仕事がやってきて、てんやわんやと慌ただしい。
「あ、あの〜……井上課長」
そんな中名前を呼ぶ声に振り向くと、背後に立つのは後輩社員の女の子・町田さん。
彼女のその不安げな声と引きつった顔、そして手にしているなにかの書類に、『いつものか』と察して、自分の眉間にシワが寄るのを感じた。
「なに?どうかしたの?」
「す、すみません、実は今月の有給申請出すの忘れてて……これ、」