小悪魔な彼にこっそり狙われています
4.君が笑うから
それは、彼の怪我から1週間が経とうとしている頃。金曜日の午後のこと。
「あれ、井上さん。お疲れ様です」
すぐ隣の秘書課のオフィスへやって来てみれば、皆出払っているようで、室内には来栖くんひとりがいるだけ。
彼は壁際のデスクで、手元の用紙からこちらへ視線を移すと不思議そうな顔をする。
「来栖くん、この前の約束を果たすわ」
「へ?」
「日曜、デートしましょう」
突然の私のひと言に、手にしていたボールペンがポトッと落とされた。
「……マジですか」