小悪魔な彼にこっそり狙われています



……なんて、言い訳がましかった?



けど言えない。言えるわけがない。

ケガのお詫びにデートを、なんて気恥ずかしくて、こうして買い出しを口実に誘ったなんて……!!



あぁもう、どこまでかわいくない女なの!私!

全く表には出せないけれど、ちゃっかり新しいスカートを履いてきたりとか、服装に2時間悩んだりとか……余裕がないところがまた情けない。



けど、彼が軽い気持ちで言ったのかもしれないひと言を本気にしていると思われたら嫌だとか、本気だとしてもそれはそれで照れてしまうとか……。

あれこれと気持ちが頭の中をめぐって、悩んだ結果がこれだ。



「井上さん」



そうひとり考えていると、突然名前を呼んだ来栖くんは私に手を差し出す。

突然のその大きな掌に、意味が分からず首を傾げた。


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