小悪魔な彼にこっそり狙われています



「それが怖くて飼えないっていうのもあるんだよね。まぁ、そもそも独身のひとり暮らしじゃ満足に構ってもあげられないんだけど」



自虐まじりに笑って言うと、手元のストラップを見つめる。



「けど将来は絶対飼うんだ」

「将来?」

「うん。小さな一軒家に、旦那と子供と大きな犬と、暮らすのが夢なの」



幼い頃からの、切実な夢。

田舎でもいい。穏やかな土地で家族と犬と暮らすこと。それが将来の夢。

笑みをこぼして話してから、ハッと気づく。



「って、ごめん。ひとりで夢語ったりして」



誰にも言ったことのない、こんな地味な夢を語ってしまうなんて、恥ずかしい。

そう話を撤回しようとする私に、来栖くんは首を横に振る。



「いいじゃないですか。素敵ですよ」

「素敵って……」

「それに、井上さんの夢教えてくれて嬉しいです」



『嬉しい』、そのひと言が胸の奥をくすぐった。


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