小悪魔な彼にこっそり狙われています
「失礼します」
ノックをしながら隣の秘書課のオフィスへ入ると、秘書課の女性社員が「お疲れ様です」と出迎えた。
そんな彼女へ挨拶を返し書類を手渡すと、なにげなく辺りを見渡す。
するとオフィスの端にあったのは、今日は紺色のスーツを着た来栖くん。
それと、彼と話す灰色のスーツを着たすらりとした体型の若い男性……うちの会社の社長である、桐生社長だ。
少し長めの茶色い髪を左でわけ、通った鼻筋と二重の目が印象的な綺麗な顔立ちをした桐生社長は、その見た目に加え御曹司、若社長という立場もあって社内外問わずよくモテる。
本人もそれをよくわかっているからか、女性に対しいつもチャラチャラヘラヘラ……。私は嫌いではないけれど、苦手だ。
そんな桐生社長は来栖くんに笑顔を見せ、親しげに話している。
あのふたり仲いいのかな……あ、そういえば来栖くん、たまに桐生社長の運転手をしているんだっけ。
確かに来栖くん、運転上手そうだし口も硬そうだから社長も信頼できるのかも。
そんなことを考えながら見つめていると、不意にこちらを見た桐生社長と目が合う。