小悪魔な彼にこっそり狙われています
すると来栖くんは言いながら手を伸ばし、私の唇の端をそっと撫でる。
くすぐったさを感じたその指先には、赤いソースがほんの少しついていた。
そのことから、それは自分の口の端についていたこと、そしてそれが彼の言う『抜けてるところ』だと気付き、恥ずかしさにボッと頬が熱くなった。
「っ〜……」
言葉にならない声をあげて、顔を両手で覆い隠す私に、来栖くんはふっと笑みをうかべた。
「そういうところも、かわいいです」
「うるさいバカ!」
こんなにもまっすぐに想いを向けられることに慣れていない心は、ただひどく戸惑う。
けれど、嬉しいとか幸せとか、穏やかな色の感情を感じている。