小悪魔な彼にこっそり狙われています
「ふぁ〜……」
週明け月曜日の朝。
始業前のまだ静かな社内で、私は大きなあくびをしながら廊下を歩いていた。
……寝不足だ。
というのも、隙あらば来栖くんのことばかりを考えてしまっている最近。
たびたび夢にまで出てくる彼に、そのたび目を覚ましドキドキしてしまい……今朝は二度寝を諦めて、いつもより早く家を出た。
前だったらこれが恋かもしれないと浮かれたりもした。
けど今の私は、そんなはずはない、浮かれてはいけない、と言い聞かせている気持ちが強い。
信じたいと思う気持ちも、ある。
だけど、こんなにも想われることに慣れていない心は戸惑うばかりだ。
……しかも来栖くん、確か結構モテるのに。
密かに女性社員の間で噂される彼が自分に気があるなんて、余計信じがたい。
「……はぁ、仕事でも始めよう」
折角早く出勤してきたのだし、仕事でもして気を紛らわせよう。まずは今日の会議の準備をしよう、と私はフロア端の会議室へ向かった。