人魚の詩
昼になると、女子高生というのは机でグループを作って食べている。
スクールカーストだかなんだか、貴弘はそういうのはあまり気にしたことが無かったけど、言われてみれば と思い当たるものはあった。

クラスの中心はここだ!と言わんばかりに
大きな声で騒いで笑っている女子や、その顔色を伺って食べている地味めな女子たち。

そのどのグループにも所属せず、
1人で食べている彼女の周りには少し独特な空気があった。

「本当に馴染めてないな、高岡さん。」

貴弘達から見ても、馴染めずに「ぼっち」になっているのは分かった。
転校生が来たら、群がるものだろう?女なら尚更だ。そう思っていた。

「ねえ〜、高岡さん!一緒に食べない?」

おい!誠!と焦った素振りを見せる貴弘にいいじゃんいいじゃん、といつも通りお気楽マイペースな誠。

だからこいつはモテるんだ。

「……いい。」

小さく断った声に、周りの女子が反応した。

「何それ。せっかく誠が誘ってんのに、その断り方無いんじゃない?」

「そうだよ、今のは酷いわ。」

耐えきれなくなった彼女はお弁当を持って教室を飛び出した。
しーん、とした気まずさという沈黙が流れる。

「まあ、俺は気にしてないよ?こんくらいで皆もブーブー言わないの。」

「つか、酷いのどっちだよ。誠の誘い断ったあいつ?違うだろ。なんでお前ら誘ってやんねーんだよ。移動教室の時も、あいつ迷って授業遅れてきてただろ。女には女友達って大事なんじゃねーの?だからお前らつるんでんだろ。」

普段、男以外とあまりしゃべることのない貴弘が捲し立てて怒鳴ったので誰もが驚いた。
男友達でさえも、いつも一緒にいる誠でさえも
感情的になる貴弘を見たことがなかった。

言いたいことを言うだけ言った後に気がついた。しまった…と。

「あ…いや俺は別に…。」

かく言う貴弘も、周りの視線を気にして
顔色を伺って気を使って過ごしている人間だった。だから、かなり後悔した。

俺のステータスが崩れる…と。

「貴弘かっけー。」

でも親友のその一言で彼のステータスは守られた。これだから、誠はモテるんだ。

「もっと仲良くしてやってよ。俺らも、気にかけるからさ。」

誠はイラついているのか気まずさを感じているのかわからない女子を宥めてそう言った。


「でも…あの子、先生の…。」


貴弘は後ろの方いた女子の小さな呟きを聞き落とすことはしなかった。

「先生?何それ。」

教室に生温い沈黙が流れる。

「高岡さん、高岡先生と一緒に住んでるって、みんな言ってるよ。」







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