人魚の詩
「夏希と恭ちゃんは、従兄弟なの。パパのお兄ちゃんの子供。小さい頃から遊んでもらったりしてて…。それで、今はちょっと事情があってママとパパとは別に暮らしてて、恭ちゃんが夏希を預かってくれてるの。」
それ以上、深く語らない彼女に2人もそれ以上は聞かなかった。
何故、別に暮らしているのかとか色々疑問はあるけど、人に言えない「事情」というやつなんだろう。
とにかく今は、いじめの問題が先だ。
「それ、誰かに言った?」
「2人がはしめて。でも一緒に住んでることは知られてたの。なんでかわからないけど…」
考えた結果、先生のことが好きな生徒がやったんじゃないか。ということになった。
先生は25歳で若くてモテる。
生徒から行為を持たれることはよくあることだった。
「他にもなんかされたりした?」
「今のところは…」
「じゃあ、こうしようぜ!!」
ずっと黙っていた誠が急に口を開いた。
目をまんまるくして、誠を見る彼女に誠は自信満々な表情で言った。
「これからは俺らと行動してろよ!それなら安心だろ?誰かに嫌がらせされなくなるって!」
それはいい案だと思ったが、誠もかなりの人気がある。同じような反感を買わないか貴弘は心配していた。
「万が一、なんかあったら俺らがやっつけてやっからよ!」
任せとけ!と言う誠に、それもそうか。と思い貴弘も賛成した。
「まあ、チビ太も1人でいるより楽しいだろ?」
時計の音と風の音が柔らかく響く理科室で
彼女の笑顔に2人が心を打たれたのは言うまでもない。