へそのを

umbilical cord




俺の婚約者が死んだ

つい数日前浮気を責めたからだろう

可愛らしい人で

みんなが言う


『惜しい人を亡くした』


と。



だけど誰にもわからない

浮気相手が葬式に来たこの気持ちを

同僚が浮気相手な気持ちを

誰にも理解できないだろう



そう思い 自分の殻にこもり

家に引きこもっていた

だけど仕事はしなければならない

嫌でもアイツの顔を見なければ


そんな暗い気持ちをかき消す為

俺は海へ向かった。


この町には
転勤でやってきた。

元々住んでた所から遠くて
ならばいっそ と
引越しをしてきた

そして 彼女と初めて来たのは

この海だった。

そこの石の階段で
2人でサンドウィッチを食べた

もうどこにもいないのに

つい探してしまう。



ふと石の階段をみると


誰かが座っていた



だから思わず話しかけたんだ


その子はまだ中学生のようだった


だけど 黙っていて

なんだか 俺と同じで

何かを抱え込んでいるように見えた

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