腹黒御曹司がイジワルです
しかも、そうした仕事に対する考え方が、できれば楽をしたい他の女子社員とは違い、かわいらしくないようで、男性社員からもなんとなく一歩引いて見られることが多かった。
だからか、こういう飲み会に出席しても、私のことを知っている男性社員はあまり話しかけてもこない。
でも賢は転職してきたばかりということもありのか、気さくに話してくれた。
「いいねぇ。そういうハングリーさを持っている人、好きだよ」
『好き』という言葉に心臓が音を立てる。
実は仕事を始めてすぐに、学生時代の彼氏とは別れてしまった。
私があまりに仕事に夢中になったせいだ。
だから、こんなに優しい言葉を男の人から掛けられたのは久しぶりだった。
「我妻さんとは話が合いそうだ。俺、自立した女の人、尊敬するんだよね」
そう言う彼はスマホを取り出し、「アドレス交換しない?」とすぐに提案してきた。
その返事はもちろん、イエス。
未来のビジョンをしっかり持ち、わざわざいばらの道を選んだ彼が、まぶしく見えたのだ――。