腹黒御曹司がイジワルです
それから私たちの付き合いは、すぐに始まりあっという間に一年が過ぎた。
彼は元カレとは違い、仕事の忙しさからデートを断ってもイヤな顔ひとつしなかった。
もちろん彼の方にもそういうことは多かったけれど、私たちは互いの仕事を尊重しながらの付き合いを楽しんでいた。
『志穂。今日会える?』
決算がやっと終わりひと段落ついたその日、彼から電話がかかってきた。
「うん。私も会いたいかも」
気がつけば、彼と会うのは三週間ぶり。
メールや電話で連絡は取り合っていたけれど、やっぱり会えないのは寂しい。
待ち合わせは、会社近くのカフェ。
ジャケットを脱いで隣の席に置くと、テーブルに置いてあったスマホが震えた。
【ごめん。飯行くって言ってたけど、行けなくなった。待ち合わせ、二十二時に変更して?】
賢からのメールに、大きな溜息をついた。