腹黒御曹司がイジワルです
「次は……ここ、か。まだまだシェアを伸ばせそう」
ターゲットに決めたスーパーの担当者へのプレゼンを頭の中で組み立てながら、あっという間に牛丼を食べ終わった。
牛丼屋を出たところでスマホが震え、慌てて出る。
賢からの電話だとばかり思ったのに、それは友人の小栗千佳(おぐりちか)からだった。
「もしもーし」
賢の電話でないことに落胆した私は、それを気づかれまいと、努めて明るく振る舞った。
『もしもーし、じゃないわよ。ちっとも電話よこさないんだから』
「ごめんごめん。忙しかったの」
そういえば、数日前から何度も電話をもらっていた。
履歴には残っていたけれど、折り返すのが面倒で放置していたのだ。
『だから鉄の女って言われるの。たまには仕事のこと忘れなさいよ』
千佳は、プレッスルに入社してできた唯一の友人。