憂鬱な午後にはラブロマンスを
再会
小さな頃から自分にもシンデレラストーリーが待っていると信じていた。
きっと大人になった私のところへ素敵な王子様が迎えに来てくれると夢見ていた。
だけど、そんなのは儚い夢だと知るのに随分時間がかかってしまった。
夢に破れた彼女は遠藤珠子(えんどう たまこ)。
大学卒業後に入社した(株)イケダに勤務している。
(株)イケダは全国の量販店向けのテーブル等の製造販売をしている会社だ。
そこの営業部に所属する珠子は忙しい毎日を送っている。
「ねえ、珠子、今度新しい部長が来る話しって知ってる?」
「新しい部長? 人事異動があるの?」
「そうらしいわよ。それも、外部からやって来るんですってよ。その部長ってかなりのやり手らしいわ。」
珠子の同僚の森田郁美(もりた いくみ)は新しくやってくる部長に興味深々の模様。しかし、珠子はそんな人事には興味なかった。
どんな人が部長になろうとも仕事が問題なく出来るのであればそれで十分なのだ。
「あら、その部長って若くてかなりのイケメンらしいわよ?」
「郁美の餌食にならないといいわね。新たな部長に同情しちゃうわ。」
「餌食だなんて失礼ね。ちょっと、味見するだけじゃない。それくらい許されることでしょう?」
郁美にとっては単なる味見かも知れないが、珠子は郁美の真似どころか男の人との交際ですら興味が持てなかった。
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