憂鬱な午後にはラブロマンスを
一方、社長室へと案内された洋介は社長と初めて挨拶を交わす。
少し緊張した面持ちで姿勢を正し社長室へと入って行く。
「常務から君の素晴らしい業績を聞いているよ。今日が来る日を楽しみにしていたよ。来てくれてありがとう。」
「こちらこそありがとうございます。私の仕事を認めて頂けてとても有難いです。」
「まあ、まずはかけてくれ。」
ソファに腰かけると洋介は人当たりのよい社長に働きやすい職場かと感じた。
この会社の常務にヘッドハンティングされ多少は自分なりに調べ勤務するのに面白い会社だと感じていた。
実際、会社へ来てみて元妻の珠子の存在に余計に楽しくなりそうだと笑みまで出てしまう。
「おや、君は再婚したのかね?」
洋介の左手に指輪がはめられているのを見て俊夫が尋ねた。
俊夫は今、珠子に求婚中な為、洋介の指輪は意味あるものだった。
「いえ、これは、その、」
洋介のハッキリしない態度に俊夫は釘を刺すつもりで話をした。
「一応我が社に勤務する社員の素性は粗方調べさせてもらうんだよ。」
洋介は自分が独身であることを言えずに黙りこむと俊夫はそんな洋介を見てさらに話を続けた。
「君の元奥さんも今この会社で働いてもらっている。」
「そのようですね。先程営業部にいるのを見ました。」
「私はね今、彼女に求婚中でね。そろそろ返事をもらえると思っているんだよ。」
俊夫の発言に洋介は思わず俊夫の顔を睨み付けるように見てしまった。
予想だにしていなかった展開に洋介の首筋に汗が流れた。