憂鬱な午後にはラブロマンスを
上司と部下
いよいよ、洋介が勤務する日がやってきた。
営業部では新しい部長の噂話で騒々しい。
「郁美、机の上は拭き終わったの?」
「もう、終わるわよ!」
雑巾を片手に他の社員達と新部長の洋介の話で盛り上がっていた郁美は、話しに夢中で掃除に手が回らない。
呆れた珠子は一人机の拭き掃除に忙しかった。
そんな様子を影ながら見ていた洋介は、ここでも、女子社員の色目に頭を痛めていた。
そして、いよいよ始業時間になると洋介は自分のデスクへと行き椅子に腰かけた。
洋介が営業部の中を歩くだけで社員全員の視線を集めていた。
主任の相川は自分が部長のお世話をすると言わんばかりの態度に、女子社員からの冷たい視線を浴びていた。
「相川、全員を集めてくれ。」
洋介の声に営業部の社員全員が反応し直ぐに部長のデスクの周りへ集まった。
洋介は在り来たりな挨拶をすると営業部全員の名前を覚えたいからと各自に名前と一言アピールをするように言った。
一言アピールなど初めての経験に社員は皆戸惑っていた。
すると、洋介は真っ先に指さして「君からどうぞ」と珠子を指名した。
「私は遠藤珠子です。パソコン作業が苦手ですが一生懸命頑張って仕事をしています。今は仕事以外は興味はないです。」
珠子は、旧姓に戻さず結婚したままの苗字を名乗っていたことに気まずさはあったものの知らぬ顔を通していた。
洋介は珠子を見てフッと笑うと次に郁美を指名した。
そして、次々と自己紹介が続いていった。